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カラーイラストを素早く仕上げるためにしたこと

2023年3月22日


バケツ塗り最高!

描き方を変えて「インターネットお絵かき」として不足ない品質の背景つきカラーイラストを以前より早く仕上げられるようになりました。

「けもV」のウサギコウモリちゃん2023-03-18公開のイラスト(高画質)

いつも投稿しているファンアート、この絵は新しい手順でもって朝から取り掛かりその日の夕方までの間に描けました。部品と装飾の少ない絵だから早く描けたというのもありますが、以前は同じくらいの絵でもラフから線画までがまる1日、カラー半日くらいの時間がかかっていました。なので、少なくとも半日は早く描けるようになった。この勢いでどんどん描きたいリストを消化したい。

スピードアップのために取り入れたのは「バケツ塗り」。デジ絵では常識の方法じゃんと言われればそれまでなのですが、これまではバケツ塗りをするための線画ができてなかったんで矯正しました。バケツ塗りの他にもスピードアップの取り組みについてまとめます。使ってる描画ソフトはProcreate。

色塗りのための線画

線画を矯正してバケツ塗りのために徹底して線を閉じるようにしました。こうしておけば、あとはプロクリなら線画を「基準」レイヤーに設定してどんどんバケツ塗りできます。

以前の線画は途切れがち

以前の線画はぱっと見は閉じてるようでも穴だらけだった。筆圧によって透明になったり、こっちのほうが質感があって好きなんだけどもバケツ塗りはできない。ベタ塗りするには筆圧で大きく大小する不透明ブラシを駆使して人力で塗り潰したり、線画をまたなぞって色ごとに囲って塗り潰したりしなければなりませんでした。バケツ塗りができればこの作業がまるまるなくなります。

ようはバケツ塗りできるように気を付ける、というだけなんですがそのためにいくつか工夫もしてます。

線が閉じてるかわかりやすいブラシ設定

筆圧に関係なくずっと不透明で最小サイズが小さくなりすぎない、ボールペンのような設定のブラシで線を描きます。穴を塞ぐべきところで線と線が接しているのを視認しやすい。

このブラシでは強弱がなくなって以前と比べて質感が下がりますが、効率良く仕上げることは質感を引き換えにするだけの価値があります。これはこの間アニメを描いてみたとき、10コマの彩色を人力でブラシ塗りするという大変な手間を経てやっとわかった諦めどころです。

しっかり閉じている新しい線画

ちゃんと閉じる線画が身についたら少しずつ強弱のある描き方に戻して、ゆくゆくは品質と速さの両立もできるはず。

描き順は部品ごとに囲うように

閉じるのを徹底するために線画をどこから描くか順序も変えて、パーツごと囲うことにしました。以前は全体の大きいシルエットから細部へという順序でしたが、部品分けを優先した順番にして漏れにくくします。

パーツの輪郭だけ描けばいい

線画にパーツ分け以外のシワや髪の流れなどの線を描きたくなるんだけど、結局この次の色塗りでそこに影を描くので我慢します。そういった線は線画の前段階のラフなどに残しておいて、色塗りのときにうっすら表示してなぞりましょう。

その他の短縮術

バケツ塗りのための線画を作るようにしてその恩恵を得られるようになりました。この他にも素早く描くためにしていることがあります。

手を止めないための工程の細分化

ラフを描き込んだ次あたり、線画に入る前に一回「ほぼ線画」を書きます。ほぼ線画は清書ではなく、飛び出しや消しカスを綺麗にするのは忘れて、どんどんラフから削りだします。手順を並べると、
>ラフ → 描き込み → 線画
から
>ラフ → 描き込み → 細部を気にしないほぼ清書の線画 → 色塗りのための線画
という順番にします。

これまでの手順では、線画を描くとき、いくつかの課題を同時にこなさなければなりませんでした。

①描き込んだラフから形を選び取りながら、
②かつ清書なのでキレイに、
③その他交差したところを消しゴムできれいに整えたりとか、

これだと線画段階の負担が大きい。多くのことをいっぺんにやろうとすると大変なのを「ほぼ線画」で①と②を半分くらいやって線画で残りの半分をやります。工数は増えますが、それぞれの負担が減りサクサク進められます。

左:ほぼ線画、右:バケツ塗り対応線画

影はまとめて乗算、ただし肌は除く

背景の上の人物の影は一つのレイヤーにまとめて描きます。全部の色レイヤーの上に影レイヤーを作り、合成モードを乗算にします。そこへ色を仮置きして、色相と明度をグリグリして場面に馴染みそうな影の色を作りましょう。色ができたら一旦標準合成にしてスポイトして最上の標準レイヤーに塗っておきます。

プロクリにパレットなぞ軟弱なものはない(あるけど使いづらい)

そうしたらあとは、色の垣根を超えてどんどん影を置けます。違う色味や濃い色や薄い色が欲しくなったらその都度影の色を作りましょう。それでも、全部の影を塗るのにそんなに色数は増えないはずです。色わけしたレイヤー一つ一つに合成レイヤーを作るのに比べてレイヤーの切り替えの操作も省けて効率が上がります。

肌は、大切なパートとして特別扱いします。肌は赤みと青みと緑み(黄み)が混在するので乗算で色塗りしないで標準合成モードで透明に重ねた方がそれっぽくなります。レイヤを惜しまずどんどん足すと調整と取り返しがきいて安心です。肌以外でも髪やほかパーツも優先度によって柔軟に特別扱いしよう。

早いのはいいけどやっぱり品質も下げたくない

以上がいまの私の早く描くための取り組み、ラフになりすぎず早く描く場合の手順です。絵を早く仕上げられると描ける枚数は増えるし、日をまたいで熱が冷める心配もないし、いい事だらけです。ただ、このスピードアップは品質を対価に得たものであり線画を矯正したままこの描き方しかしないというのではなく、いつかは品質と両立させなくてはなりません。線画を変えることになったのにはプロクリのミニマルぶりが影響してないこともないので、もっと目的にあったツールに変えることも考えた方がいいのかも。

KuniKuni

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