
ゴットフリード・バメス『定本 基本の動物デッサン』、大久保ゆう訳、パイ インターナショナル、2018年。動物の描き方を227点の図をもって手引きする本。
文章よりもとにかく絵で動物の描き方がどんどん解説されていきます。その図の数は227点あり、大まかに数えて233ページ中164ページほどです。その絵の多くは著者による動物のスケッチを元に図解のために新規に作成されたとのこと。水彩の素早く大きな筆使いでパーツごとの形をとらえたり、デフォルメされた骨格は面の形が分かりやすいハッチングがされていたり、絵の描き方を伝えるための絵となってます。これらの図に倣ってスケッチに取り組めば、正しく効率的に動物を描く力が付きます。
この本で書かれるのは、動物そして絵を描くそもそもとしてアタリをとるところから、骨格と動きといった全体の捉え方、続いて脚や頭と胴の部品に絞った解説、そして動物を体毛や模様を含めた全身を描画する例、まで。最後に「画家としてのスキルを高めるには、本書で教えられたことを越えていく必要がある。」(p227)と締めくくられます。この本の先、次の段階により踏み入った解剖学や、芸術の領域、あるいはイラストやアニメーションなどが待っているわけです。
題について、本国ドイツ語版の”Tiere zeichnen”(Christophorus発行、2010年)という題を翻訳機にかけると「動物の描き方」となります。過不足ないこの本の題。いっぽう日本版の題の『定本 基本の動物デッサン』は「基本」・「デッサン」と基礎が強調されてます。「動物の描き方」と言い切れるだけのこの本を「基本」に限定しちゃうのか、と思ってしまいます。でも、この題が入門書らしく見えたからこそ本屋で手に取ったのですけどね。思うに「定本」とあるのは、マーケティングのために失われた、ドイツ版にはあった言い切った力強さを補う意図があるんじゃないでしょうか。

2023年の2月にヤマネコをイラストに描いたとき、猫科の描き方をこの本の図を参照しながら練習しました。
本の情報
- 著者、ゴットフリード・バメス
- 題、『定本 基本の動物デッサン』
- 翻訳、大久保ゆう
- ISBN、978-4-7562-5006-3 C3070
- 発行、パイ インターナショナル
- 発行日、2018年4月7日 第一版